“小さくて強い店” を考えてみた14.

前回のつづき
ぼくが多店舗化を志向したり、会社を大きくしたいと考える理由の一つは、「倒産リスクを下げるため。」と書いた。それは、ぼくが「小さなお店(会社)は、倒産リスクが高い。」と思っているということでもある。
きっとこれは飲食業に限らず会社や事業所といったものを構えている以上、世の中のほとんどのお仕事に共通することなんじゃないかと思う。
ぼくらが抱えるようなこういったリスクがあまりないお仕事があるとすれば、民間でない国が守ってくれているお仕事であるとか(それも怪しい気がしてきているけれど)、完全にフリーランスでされているお仕事くらいなんじゃないかと思う。とはいえ、フリーランスであってもクライアントさんがいたり、取引先業者さんがあったりと何かしら社会と繋がっているからのお仕事だと思うと、少なからず景気や経済に影響を受けることも考えられるし、そういった意味では、ぼくがよく書くところの “自分の意思ではコントロールできない外的要因” によるリスクだって、もしかしたらぼくらよりも大きいのかもしれない。
ぼくはいろんな職業の方々とお会いさせていただく機会があるんだけれど、作家の万城目学さん蜷川泰司さんのお話を伺っていた際に、ふと “自己完結が本当に可能なお仕事があるとすれば、作家さんくらいなのかもしれないなぁ” と思ったことがあった。それにしてもやはり出版社というパートナーの景気云々といった影響や事情はあるだろうし、こういった才能といったものを生業にされている方々というのは、リスクとして ”才能の枯渇” といった恐怖心などはあるんだろうかなんて、ぼくのような凡人にすれば余計な心配が頭を過ったりもする。
まぁ、どんなお仕事であっても気楽なものなんて恐らくない。

閑話休題。
ぼくらのように “食べもの屋” を事業としてやっていると、追い風を感じることはほとんどないのに、向かい風だけは四六時中受けているような気がするんだけれど、この同じ向かい風を受けるにしても、体力のない小さなお店ほどそのダメージはやはり大きなものになる。
お店をやっていると機械の故障などでメーカーさんに修理の依頼をすることがある。冷蔵庫の調子が悪くなったり、なぜか決まって夏にエアコンが故障したり。特にパン屋さんやケーキ屋さんというのは機械が多いので、結構な頻度で依頼されることがあると思うんだけれど、請求書を見ると仰け反りそうになるほどの額だったりすることも少なくない。内訳を見てみると交換してもらった部品の価格よりも出張費、工賃がほとんどを占めていて、やるせない気持ちになったという経験のあるオーナーさんも大勢いらっしゃるんじゃないかと思う。こういった泣き所を突いてなのかはわからないけれど、今だと保守契約といった本当に得なのか損なのかよくわからないような制度もあったりするんだけれど、これもまた驚くほど高額な契約だったりする。
例えばこの修理代一つを取り上げてみても、お店や会社規模によって価格が違うといったことは当然だけどあり得ない。同じ機械が故障をしそれが同じ原因なのであれば、お店や会社の規模に関係なく同額の請求書が来ることになる。
どんなお店であっても想定外の出費が痛いことには変わりないけれど、同じ額でも会社やお店の体力の大きさによってその痛さ、ダメージの感じ方はかなり違ってくるんじゃないかと思う。当然、分母である体力の大きなお店の方がダメージは少ない。これは修理に限らず新しく設備を追加しようと考えた場合にも同じことが言える。
他にも、例えばお客さんや現場のスタッフのためになるような素晴らしいアイデアや労働環境改善の方法を思いついたとして、それを言葉にするだけなら簡単なんだけれど、本気で実行しようとするとやはり相応のコストが必要になる。こういった場合にも、小さなお店よりも体力のあるお店や会社の方が打つ手が多くなるのは当然と言える。

何年か前、京都の老舗、進々堂さんが改装をされ、その際に設備もかなり入れ替えたといったお話を続木社長から伺ったことがあった。進々堂さんは店舗数も多ければ、うちとは桁違いの体力(売上規模)のある会社なんだけれど、それにしても社長がサラッと話された投資額を聞いたぼくは、椅子から転げ落ちそうになった。さらに驚愕したのは、改装や設備投資のための年間予算を「これくらい見ている」と教えていただいた時で、思わず「セコイぼくなら、その年間予算で新規のお店が1〜2軒つくれますよ・・・」と言わずにはいられなかったんだけれど、お話を伺ったぼくは “やっぱり会社を大きくしないとダメだなぁ” と強く思ったものだった。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。