“小さくて強い店” を考えてみた19.

前回のつづき
ぼくは小さな規模のお店ほど、単品商売やいわゆる専門性のあるものの方が良いと昔から思っているところがあって、先日、書籍にしていただいた “空想サンドイッチュリー” の元ネタとなった「いつか、引退したら小さなサンドイッチ屋をやりたい」というぼくの話も ”サンドイッチ専門店” を指している。
トンカツ屋さん、蕎麦屋さん、うどん屋さん、焼肉屋さん、ピザ屋さん、ハンバーガー屋さん、パスタ屋さん・・・やっぱり単品商売、専門店って成立するなら強いなぁと思える。あれもこれもやるよりもオペレーションも材料の種類もシンプルだから、設備だってシンプルで済む。
オペレーションがシンプルということは人員が少なくて済むということだし、設備がシンプルということは初期投資が少なく、厨房面積も小さくて済むんだから、まさに小さなお店向きだと思う。

こういった専門店ほどではないけれど、98年に最初の店をやり始めた際、ぼくはこんなことを考えていた。
当時、大きなパン屋さんはもちろんのこと、街場にある小さな個人経営のパン屋さんはどこもクロワッサンやデニッシュ、あんぱんやクリームパンといった菓子パン、食パンからバゲットなどのフランスパンまで種類も数も多くのパンを焼かれていた。ぼくのお師匠さんの店もそう。当時は、「パン屋は100種類くらいは必要。」なんてことまで言われる方もいらっしゃったくらいで、それが普通のことだった。
ぼく自身も何の疑問も持たず、最初の数ヶ月間はあれもこれも作っていたけれど、売れなくて原価の高いパンも毎日捨てるような日々だったし、なんせバカだったので段取りも悪く仕事も終わらなかったこともあって、ふと思うことがあった。

“売り上げは必要だから棚は埋めないとマズイけれど、本当にこんなにも種類が必要なのか?これだけパン屋さんが多くなったんだから、何でも揃うようなパン屋さんは大きなお店に任せて、人材も資本力もないぼくは自分が得意なことだけに絞った方がいいんじゃないか・・・”

そう考えたぼくは、オープン当初やっていた食パンをやめ、デニッシュや菓子パンなども極端に減らすことにした。この時、お師匠さんから「食パンのないパン屋なんて成り立つわけがない。絶対に無理だからやめとけ。」と言われたのを憶えている。他の方からも「あんぱんも食パンもないパン屋なんて、イチゴショートとシュークリームのないケーキ屋みたいなもんやなぁ」と嘲笑されたこともあった。
ところが、このあんぱんも食パンもなければ、菓子パンやデニッシュもろくにない1軒目の店は、結果的に成立することになった。
今思えば、技術があったというよりも時代が味方をしてくれたんだろうなぁと思う。

余談になるけれど、週末だけの営業に切り替えようとした際にも、同業者をはじめ多くの方々から「店が潰れるぞ。」「お前はバカか。」といったご心配の声をたくさんいただいたけれど、こちらも成立するどころか数年後には過去最高の売り上げを記録することになり、「お前はバカか。」とご心配をしてくださった方に報告をした際には、「お前は天才。やると思っていた。」という何とも軽薄な褒め言葉をいただいたこともあった。
“普通” や “常識” なんてその程度のものだし、きっとそれらも時代とともに変わるものなんだと思う。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。