“小さくて強い店” を考えてみた24.

前回のつづき
どの世界(業界)にも “才能がある人” という方はいらっしゃるもので、ぼくら飲食の業界にもそういった方々は、やはりいらっしゃる。
何をもって “才能がある人” というのかも難しい気がするし、受け取り方も人それぞれなんだと思うけれど、ぼくが個人的に「この人は才能があるんだろうなぁ」と感じる人というのは、たいていの場合、それまでになかったサービスやものを生み出す人のような気がする。つまり、オリジナルなものを生み出される人に対して、ぼくは「この人は才能があるんだろうなぁ」と感じているんだと思う。
“天才シェフ” といった言葉はどうも好きになれないし、眉唾だなぁと思うことが多いけれど、例えばパン屋さんならそれまでになかった製法そのものを生み出し、美味しいものを作られている人を見ると「才能ある職人さんだなぁ」と思わずにいられない。玉木さん(たまき亭)とか。
タイプは違うけれど、ぼくが仲良くしてもらっている人の中だと秀島さん(NATIONAL DEPART)杉窪さん(365日、15℃)がそう。彼らはどこまでもオリジナルにこだわる人なので製法だけでなく、杉窪さんならこれまでになかった業態までつくろうとされるし、デザイナーでもある秀島さんはパッケージはもちろんのこと、これまでになかった仕事そのものまで生み出そうとされている。きっとこういった「0から1」を生み出す仕事がクリエイティブと呼ばれるもので、それらを生み出す人たちが才能のある人、クリエイターと呼ばれる人たちなんだと思う。
ぼくはといえば、悲しいくらい才能がない。残念だけど、ぼくが「0から1」を生み出すなんてことは、間違っても生きている間に起こりそうにもない。「0から1」が無理ならば、それじゃあ王道で・・・と思ったところで、その道、その道で経験も長く、深く追求されてこられている方も既に大勢いらっしゃる業界で、経験も短く、おまけに不器用なぼくが正面から参入したところで抜きん出ることができるとは到底思えない。そこでぼくは、才能がないからといって卑下するでもなければ、経験が短く不器用だからと諦めるでもなく、こう考えるようになった。
才能や経験、技術といったないものねだりをしても仕方がない。今のような時代になるとパン屋さんに限らず ”同じ土俵” と呼ばれるような場所というのは、たいていのものは出尽くしていてレッドオーシャンなんだから、それなら別の土俵なり自分の居場所を作ればいい。といっても特別なことができるわけでもないぼくがやったことといえば、フランス料理を学んだ人なら誰でも作れるパテ・ド・カンパーニュやブランダードを作ったり、パン屋さんでは調理しないであろう仔羊の肉などを焼いて、パンを学んだ人なら誰でも焼けるパンを焼き、それらを挟んだだけのことだった。ちょっと手間は増えるけれど、正直誰にでもできるようなことしかぼくはやっていない。
「0から1」を生み出す才能がなくても、少し視点を変える、既存のものの組み合わせを変えてみるというだけで目新しいものにはなるし、意外と自分の土俵、居場所はつくれるような気がする。職人として、技術者として、全然凡人で大したことのないぼくが、”店として” は上手くいっているのだとすれば、そういうことなんだと思う。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。