万城目さん。 後編

前回のつづき
万城目さんにお会いすると、たいていこれまでの作品についてのお話を聞かせていただく。それは物語の解説だけでなく、舞台のモデルとなった場所のことや取材での裏話などもあったりで、“これほど贅沢な時間もないなぁ” と、ぼくはいつも思いながら聞いている。

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話をするのはもちろん作品のことだけでなく、うちの店の話もするし、万城目さんがデビュー以前に会社員をされていた頃のことや何度もコンクールに応募されていた頃のこと、仲良くされている湊かなえさんや京極夏彦さんといった他の作家さんのこと、そしてご家族や子育てのことなど話の内容は多岐に渡るんだけれど、その中でもいつも必ず話題にのぼるのがゲームの話。

万城目さんのファンの方なら周知のことと思うけれど、もうマニアを超えてジャンキーなんじゃないかと思うほどの愛好家で、ゲームに対するこだわりを語る万城目さんは、”小説の話の時と同じか、あるいはそれ以上に” 女子中高生のように目をキラキラと輝かせ、「カタコト語る」どころじゃない。
そういえば、新しい椅子を買いに行かれた時の話でも、「選ぶ基準が小説の書きやすい姿勢よりもゲームのしやすい姿勢が優先なんです」と冗談とも本当ともつかない顔をしながらゲームのコントローラーを両手で握る姿勢をされていた(本当のような気がするなぁ)。

最近は子供さんたちを驚かせるために手品に凝ってられるようで、ぼくも前回、今回と二度にも渡り、食後に披露していただいた。
本当にタネがまったくわからず、悔しいほどお見事な腕前なんだけれど、それよりもお店のご主人とぼくの不思議がっている様子を見ては、子供のように嬉しそうな顔でそれまで以上に饒舌になっちゃう万城目さんを見ていると、騙されたこちらが微笑ましい気持ちになってくる。

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小説家としての才能や人気は今更ぼくが語るに及ばないし、万城目さんのことを “一般人” と括るのもはばかれる気もする。やはり著名人であり 、“少数に属する人” には違いないんだけれど、そういった部分を除いたぼくの知る万城目 学さんという人は、とてもゲームとお酒と手品が好きで、気さくすぎるほど気さくな人で、関西人ということもあってか話のどこを切り取ってもおもしろ可笑しくて、派手さや飾り立てることのまったくない自然体な人で、そして子煩悩なお父さんといった “普通の人以上に普通の人” という好印象しかない。
そんな万城目さんに、ふと訊いてみた。

「万城目さんが会いたいと思う人には、もう会えるようになりましたか?」

ぼくの質問に一瞬、思案顔をされた万城目さんは、ゆっくりとこう答えられた。

「ぼくは・・・あまり欲とかがないんだと思うんですよ。」

“だと思っていました。 ” と、ぼくは内心つぶやく。

それでも京極夏彦さんとの対談が決まったことをとても嬉しそうに話されたり、中学生の頃から大ファンだという超大物ミュージシャンの方と食事をご一緒できることになったという話をゲームへのこだわり以上に目を輝かせながら聞かせてくださった。

「以前、ラジオの番組に呼んでいただいたことがあって。その時にメールアドレスの交換をさせてもらっていたので、思い切ってメールでお誘いしてみたんですよ。そしたら返事が来て・・・
もう、どこのお店にしたらいいのかわからなくて。それで最初だけはお店を決めてもらおうと思って、メールでお願いしたんです。『 “普段使いされているお店” を教えていただけますか』って。」

「そしたら〇〇〇ホテルにしましょうって返事が来て、ホテルのHPを見てしまいましたよ。あれ・・・何て言うんでしたっけ? そう!ドレスコードってHPに書いてあって。ドレスコードのあるお店なんて初めてやわって思いました(笑)
でもそれが普段使いなんですよね、きっと。
すごいですよね・・・」

ぼくに話されているのが、”あの超売れっ子小説家、万城目学さん” であるということを一瞬忘れそうになる。

「西山さんもこれまでにいろんな方に会われているから気づかれているでしょうけど、本当にすごい人ってまったく偉そうにする人いないでしょ?」

“はい、その通りですね。まさに万城目さんご自身がそうですよ!”  と、ぼくは内心可笑しくて仕方がなかった。

 

 

『カタコト語る、万華鏡』

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5月の新連載その2 万城目学さん
もし、お伝えしたいことがある。
週刊文春 6月30日
万城目さんの講演会と活版印刷所
万城目さん。 前編

 

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。