日比谷で再開します。3.

日比谷で再開する告知をした際、わずかだけれど数人の友人から「もうやらないと思ってた」、「やるんですね」といった言葉をいただいた。

前述したように、ぼく自身が「移転先を探して再開する」よりも「解散して終了」の方かなぁと思っていたくらいなので、友人たちの反応を不思議に思うこともない。
“ 解散して終了かなぁ “ と思ったのは、前回書いたような個人的な考えもあるんだけれど、圧倒的な一番の理由は、彼女たち “スタッフのこと” だった(うちの元新宿スタッフのほとんどは、男前な女子スタッフ)。

まず、彼女たちからすれば、新宿三丁目という通勤するには余りにも便利な立地に店があったため、 “ 続けたい ” と思ってくれたとしても、移転先によっては物理的に通勤が難しくなる子が多い可能性があった。それに、ぼくの中で “ 今のメンバーでなく、移転先で通える新しいスタッフを集めて再開しよう” といった考えも皆無だったので、これだけでも再開の可能性は低いと思えた。

今度は、彼女たちが続けてくれることを前提に考えた場合、再開するまでの間にぼくが提案できる職場といえば、レフェクトワール(渋谷)と京都のプチメックしかない。同じ東京にあるレフェクトワールに行ってもらうにしても、それだと今度はレフェクトワールのスタッフが余剰に出ることになってしまうので、2人くらいは京都へ行ってもらう必要が出てくることになる。当然ぼくは彼女たちの生活を担保しなければいけないので、新宿の時と同じだけのお給料を守り、京都に行ってもらう子にはこちらで部屋を用意するといったこともしなければいけない。これらを新宿店を失った状態でやらないといけないというのは、うちの会社全体の売り上げの半分を新宿店が占めていたことを考えると、経済的な問題が出てくるのも自明だった。
これだけでも怪談並みに怖い話だと思うんだけれど、ぼくにとっての本当の恐怖はこちらだった。

『新宿店が閉店する日は決まっているのに、移転先がいつ決まるのかわからないし、必ず物件が見つかるという保障だってもちろんない。』

仮に新宿店を閉店するタイミングで一度解散をし、数ヶ月後なり1年後くらいに「お待たせ、お待たせ。やっと物件が決まったよー。そんなわけで元新宿スタッフのみなさんはもう一度集まってくださーい!」と、ぼくがやった日には、彼女たちに無視をされるか、叱られている姿さえ容易に想像つくし、そんな勝手な話は虫が良すぎるとぼく自身思うので、この案も消える。

だからこの時のぼくの心境は八方塞がりで、再開するということよりも解散ということの方が必然に思えていたんだけれど、どれだけ逡巡したところで彼女たちの意思を確認しないことには何も前進しないし結論が出ない。それに彼女らとでなければ再開する気もなかったぼくは、”彼女たちが辞めるのであれば、もう解散でいいや” と思いながら、厨房を任せている子にそれとなく訊いてみた。

「みんな、どうしようと思っているかな・・・?」

「〇〇さんは家庭の事情で辞めると思いますが、あとの社員は誰も辞めないみたいです。」

想定していた答えと違い驚いたけれど、とりあえず “怪談並みに怖い話” や “本当の恐怖” が頭を過ぎることがなかったほど嬉しい大誤算だったぼくは嬉々として即答した。

「じゃあ、絶対に物件探すし、必ず見つけるわ。」

この時点で、 “ 必ず ” と言えるような根拠はなかったんだけれど、彼女たちと再開ができるのなら “ 必ず ” としか思えなかった。
そういえば、気ぜわしくしているぼくに「見つかりますよ、西山さんは強運だから。」と屈託なく言ってくれた販売スタッフがいた。

確かに・・・

結局、家庭の事情で辞める予定だった社員の子も戻ってきてくれた。
今回の求人の中には、5年ほど前に新宿店を退職し、今は別のお店で製造チーフとして働いているという元スタッフからの応募もあった。

強運な気がしてくる・・・

再開の告知後、すぐに友人から「ワタシ、再開されないと勝手に思い込んでいましたが、どうして再開されたのか? すごく興味があります。」というメッセージが届いたので、そちらも即答をしておいた。

「辞めることも選択肢にありました。再開する理由は、新宿の社員だった子たちが誰も辞めず、付いて来てくれると言ってくれたから。それだけです。」

つづく

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日比谷で再開します。1.
日比谷で再開します。2.

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。