なんちゃって・パリ

前回のつづき
もし、対面販売のスタイルを採用されている日本のパン屋さんに、「どうしてセルフ販売でなく、対面販売を選ばれたのですか?」と訊ねたとしたら、いくつかある理由の中でも恐らく真っ先に出てきて、また最も多くの方が理由とされるのが、「衛生面を考慮して」ということだと思う。
中には、フランスなどヨーロッパで働かれた経験があって、”かの国のスタイルを踏襲する” といったことを大切にされている方もいらっしゃるかもしれない。

余談になるけれど、ぼくが最初につくった赤色の店は、昔からよく「パリみたい!」と、お客様から声をかけていただくことがある。その度にぼくは、なんだか申し訳ないような気持ちになりながら説明をさせてもらってきたんだけれど、パリどころか、フランス中を探しても恐らくあんなパン屋は見当たらない。少なくともぼくの知る限り、ない。

だってあの店は、”日本式” とも言えるセルフ販売のスタイルを採用したパン屋なんだから。

もし、フランスに同じようなパン屋さんが仮にあったとしても、それは決してフランスのオーセンティックなパン屋ではないと思われる。

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ぼくは今でも、「フランスのパン屋さんは対面販売なので、多分こんなパン屋はないですよ。うちの店を例えるなら、 “海外によくある日本人が働いてもいない怪しい日本料理店” や、昔のハリウッド映画に出てくる “妙な東洋人が演じているヘンな日本人” のようなものだと思ってください。純粋な日本人が見ると、なんか違和感を覚える・・・って、あれです。」と、説明をする。つまり、うちの店は、 ”リアル・パリ” でもなければ、 “リアル・フランス” でもなく、平易に書けば、 “なんちゃって・パリ” ということになる。別に卑下しているわけでもないし、店をつくった当の本人が書いているんだから間違いない。

そもそもあの店というのは、ぼくがまだフランスへ行ったこともなかった若い頃に、 “パリに憧れ、妄想していたもの” を、その後、店という形で具現化したものだし、その妄想も ”パリの若者は、きっとみんながボーダー柄の長袖Tシャツを着て、白の501を履いているに違いない” といった先入観による正に妄想なんだから、そんな偏向したイメージからつくった店が、リアルなパリになるはずもない(雑誌「オリーブ」やフリッパーズ世代の方なら、この妄想もなんとなくわかってもらえるんじゃないかと思ったりもするんだけれど)。

おもしろいのは、 ”妄想でつくったパリの店” だったせいか、だったからこそなのか、オープンをしてからしばらくは、来店される若いお客様の多くが、ボーダー柄の長袖Tシャツを着られた方で、それは当時でも、ぼくの目には不自然に映るほどの割合だった。
もしもぼくのつくった店が “なんちゃって” でなく、”リアル・パリ” な店だったとしたら、当時のお客様の層も少し違っていたのかもしれないなぁと思ったりもする。

余談が冗長に過ぎたので、次回は本題に戻ります(すみません)。

つづく

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レイアウトって、むずかしい。
セルフ販売か? 対面販売か?

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。