世にも奇妙な物語。

前回のつづき
うちが日比谷で再開する店は、対面販売という形になった。
これは、ぼくが厨房面積を頑なまでに削ろうとしなかったためで、何度も書いてきているように、「パン屋の生産性は、厨房面積に比例する。」と、やっぱりぼくは考えるから。

当初、設計をしていただいた方は、新宿からの移転ということもあって、セルフ販売の形を取ろうとされていたんだけれど、「それだと、恐らくイートインは取れませんよ。まぁ、取れたとしても新宿と同じようにカウンター5席くらいになると思います。」とお伝えした。そこで試しに、新宿にあった機材のデータを元にレイアウトをしていただくと、案の定、カウンター5席というレイアウトになった。
やっぱり。

東宝さんの意向としては、「それなりにカフェスペースもつくって欲しい。」というのもあって、これだけ良くしてくださるパートナーさんの意向を当然、無下にするわけにはいかない。かといって厨房面積を削ることを受け入れることのできないぼくは、「ここの部分を対面販売にするのは、ダメでしょうか・・・?」と苦肉の策で打診してみたところ、その案が通った。

もちろん、対面販売にした理由の一つには、”衛生面を考慮して” といったことがある。
先日、渋谷の店に遊びに来てくれていた関西のパン屋さんが、「うちの店は、棚の位置に死角があるから万引きが酷くて・・・」という話をされていたけれど、うちもこれまでに万引きは何度もあるし、新宿の店内には死角があったため、辟易とするほどイタズラをされた経験もある。

デニッシュやタルトのフルーツだけを抜き取られていたり、パンのクープ(切れ目)から中のチーズだけを抜き取るといった、まるでイリュージョンかと思うものまで(つくる時にスタッフが入れ忘れたのではありません)。
この手の話はパン屋さんに限らず、超一流の著名なケーキ屋さんでも、棚に並べているタルトのフルーツを・・・といった同様の話を聞いたことがあったけれど、うちが新宿でオープンしてから間もない頃には、もうホラーとしか思えないほどのイタズラまであった。
それは、パンがなくなった棚に、”等間隔で長い髪の束が置かれていた” という、全くもって意味のわからないイタズラで、これを最初に見つけたのはぼくだったけれど、人間はあまりにも常識外のことが起こると、恐怖を感じるよりも思考が停止するようにできているようで、この時のぼくがまさにそうだった。それが本物の髪だったのかもわからないけれど、さすがにこの時は、警察に届け出た記憶がある。

20年も店をやって来て、これほどのホラーは後にも先にもこの時だけだったけれど、この時のトラウマともいえる奇妙な経験が、その後のぼくに「効率が悪くても、お客様に多少のご不便をおかけしてでも、対面販売の方がいいなぁ」と思わせるようになった。

つづく

33A9F23C-F596-443E-8B7F-2C8CDB2F5097

レイアウトって、むずかしい。
セルフ販売か? 対面販売か?
なんちゃって・パリ
余談
陳列スペースのこと。
台湾のパン屋さん

フランスのパン屋さん。

«                    »

西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。