パンの名前の話。2.

厨房での用語、というよりも呼称の中には、そのお店や厨房でないと通じないような ”オリジナルなもの” まであったりする。

以前、スタッフ同士のやり取りの中で「クリチが」「クリチを」というのを耳にした際、”クリチって・・・” と一瞬思ったものの、それがクリームチーズのことだというのは、ぼくでも何となく想像がついた。その時は、 ”それにしても、若い人は何でも短縮するんだなぁ” と思ったものだった。

まだ新宿店があった頃には、「ワッサンが」「ワッサンを」と言っているスタッフがいて、この時は何のことを言っているのか本当にサッパリわからず(活字にするとわかったかも知れない)、「ワッサンって、何なの?」と訊ねたら「クロワッサンのことです。」と教えてくれた。
ぼくは内心、そっちかい!とツッコミを入れ、クロワッサンを短縮するなら、どう考えても ”クロ” じゃないのか!?
なんで、”ワッサン”  やねん!?
”わっさん”って、まるで人のあだ名みたいじゃないか・・・と、どうでもいいようなことがしばらく腑に落ちなかった。

この ”ワッサン” という奇妙な呼び方は、確か彼女の前職(厨房)での呼び方だったと教えてもらったような記憶がある。
こうしていろんなお店で経験をしたスタッフが集うと、そのいろんなお店のオリジナルな呼び方やルールといったものも集い、それらが取捨選択され、使い勝手の良い言葉やルールが残っていくことになる。てことは、新宿スタッフのみんなは「ワッサンに1票。」ってことだったのか・・・と今ごろになって思ったりしたけれど、まぁ、それでみんながやり易いなら特に問題もない。

なんだかどうでもいいような話しか書いていないけれど、ついでにもう一つ。

今度は京都スタッフの話。
うちは普段から日比谷、京都とそれぞれLINEのグループで業務連絡のやり取りをしているんだけれど、ある日のLINEに ”ザブトン” という謎の言葉が出て来た。
ぼくの頭の中は、当然のようにあの ”座布団” の絵が思い浮かんでいる。
はて?どう考えてもぼくには ”パン屋の厨房と座布団” が頭の中で繋がらない。
LINEを眺めていると「ザブトンが」「ザブトンを」とスタッフがやり取りをしていることを思うと、どうやら理解できていないのはぼくだけで、他のスタッフには共通言語としての認識があるらしい。

あっ、なるほど!そういうことか・・・
「ザブトン=座布団」だと勝手に思い込んでいたけれど、これはぼくが知らなかっただけで、フランス語の何か製パン用語なんだ。
そういえば確かに漢字でなく、カタカナで ”ザブトン” って書いてるし、それを書いているのも若いけれどフランス帰りの男子だ。
そう思えば ”ザブトン” って、フランス語の発音にもありそうな気もしてくる。
あぁ、危うく恥ずかしい思いをするところだった。

そう思ったぼくは、グループ LINEに「ところで ”ザブトン”  って何なの?」と書いてみた。

フランス帰りの彼からの返信には、こう書かれていた。

 

「正方形のデニッシュの四隅を真ん中へ折ったやつです。形が ”座布団” に似てるから。」

 

つづく

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パンの名前の話。1.

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。