パンの名前の話。3.

先日、日比谷と渋谷の店のプライスカードをつくり直していて、そこに併記するフランス語表記にかなり手こずった。
「あれっ、これは複数形になるのかなぁ」とか、「これをフランス語表記にできるのか?」といった具合。

今では、別に日本語表記さえあればフランス語は要らないんじゃない?なんなら英語か中国語の方が必要なんじゃないの?とも思うんだけれど、このプライスカードのフランス語表記は、京都の一軒目をつくった時からの名残りといえる。

うちの一軒目の内外装をご覧になったことのある方ならおわかりになると思うけれど、あの店をつくった時のぼくが想定した客層というのは、フランス人を始めとした外国人のお客様だった(だったら英語表記でしょ、という身もふたもない意見もあろうかとは思うけれど、ぼくは英語がまったくダメなので)。
当時、 ”外国人のお客様だけでも成立する店にできないかなぁ” くらいのことを思っていたぼくは、多少の誤字脱字があったとしても、彼らからすればよくわからない日本語表記だけのお店よりは選択してもらえる動機の一つになるんじゃないかと考えた。もちろんコンセプトや演出上、フランス語表記があちらこちらにあった方がいいといった意図もあった。

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あの頃も「これは複数形になるのか。じゃあ、こっちにもSが付かないとヘンだよなぁ」と、あれこれ調べながら書いてはフランス人の常連さんが来店された際に、「この表記は間違っていませんか?」と確認をしたり教えてもらっていた思い出がある。
前置詞や複数形による変化、その単語が男性名詞なのか女性名詞なのかといったことにつまづくのはいつものことなんだけれど、そんなつまづいていたことの一つに ”デニッシュをどう表記しよう?問題” というのがあった。

今回、日比谷、渋谷の店の表記を「Danoise ○○」(ダノワーズ 、「デンマークの」)にしたのは、一般的に「デニッシュ」と呼ばれているんだから素直にそうしようと思ったからなんだけれど、当時は「Danoise か・・・Viennoise(ヴィエノワーズ、「ウィーンの」)じゃないのか?」と、かなり迷った。
フランスではクロワッサンやパン・オ・レザン、ブリオッシュといった卵が入ったり、加糖生地のものの総称を Viennoiseries(ヴィエノワズリー)と呼ぶし、パンにまつわるフランス語表記でよく目にしていた言葉も「les pains et viennoiseries (パンとヴィエノワズリー)」 なんだから、やっぱり「Viennoise ○○」でいいんじゃないかと思い、結局そうすることにした。

今ではどちらでも間違いではないと思うんだけれど、あの頃というのは、そんな何でもないようなことが一々気になった。
若かったんだなぁ、と思う。

つづく

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パンの名前の話。1. 2.

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。