だって、商店建築さんだもの。

先日、日比谷の店を設計していただいた清水俊宏さん(mado、元エイムクリエイツ)と一緒に、「商店建築」さんから取材をしていただき、これは本当に嬉しかった。

商店建築というのは、「飲食店の内装や店舗空間をデザインする日本の店舗デザイナーと空間デザイン、店舗 デザイン事例を紹介。」といった月刊誌で、基本的にはお店などの設計や内装デザインをお仕事にされているプロの方を読者層とした専門誌になる。
それもぼくらの業界でいえば、柴田書店さんが刊行されてきたようなその業界における王道の専門誌であり、老舗といった印象をぼくは持っている。
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畑違いの業界誌ではあるけれど、これまでにも何度か書いてきているように、ぼくが料理やパンを目指すようになったのは特段の理由があったわけでもなく、「ただただ、店がやりたい」から始まった人間なので、料理人を志した19歳の頃から不定期だけれど、料理書と並行して商店建築も購読をしていた。もちろんそれは、将来必ずやる店のための参考資料としてだった。
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当時はネットもなく、ググって画像検索というわけにもいかなければ、amazonで欲しい本を見つけてはポチりといった便利な時代でもないので、毎月本屋さんへ行くしかなかった。
この頃、本屋さんへ行った際に必ず目を通していたのが、柴田書店さんの月刊専門料理と月刊食堂、そして商店建築社さんの「商店建築」だった。
その後、多くの専門誌、雑誌が廃刊になったけれど、当時は他にも月刊の料理書やフードビジネス書がいくつもあって、とにかくそれらを読むのが楽しみで仕方なかった。
専門誌というのは部数を伸ばして儲けること自体を目的とされているわけではないので、大抵はその内容に沿った広告がそれなりにページを占めることになる。例えば、商店建築なら壁材や床材のメーカーさんの商品が写真とともに載っていたりするんだけれど、ぼくなんかはその広告の写真さえ食い入るように見ては、将来自分がやる店の内外装などを思い描いていたものだった。

とはいえ修業中の身であり、生活にすら困窮するほどだった当時のぼくにとって専門誌が高価なものだということには変わりなく、毎号買うことは難しかった。だから料理書なら憧れの料理人が載っている時や興味を惹かれる特集の際に購読するようにしていたし、商店建築を購読するのは、やはりレストランなどの特集の時だった。

商店建築は月刊誌だけれど、世界中のお店の看板やエントランスの写真ばかりを集めた「レストラン サインズ」「レストラン サインズ 2」「ストア サインズ」といった ”別冊 商店建築” というシリーズもあって、これも当時はかなり無理をして買ったけれど、その数冊をぼくは今でも大切に保管している(ちなみに写真の「レストラン サインズ」は、1991年2月28日発行で、定価4,900円)。
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もともと収入が低かったということもあるけれど、これといって物欲のなかったぼくは、それでも使えるお給料のほとんどを料理の技術書やフードビジネス書、商店建築などの本に費やしていたので、20代半ばになる頃にはそれなりに専門誌を所有するようになっていた。
ぼくの高校時代の友人に建築設計士を目指していたやつがいて、その頃、彼がぼくの部屋に遊びに来た際に本棚を見ながらこう言ったことがある。

「お前、何屋になるつもりなん?」

当時、ぼくは『料理やお菓子の技術書』『フードビジネス書』『商店建築など店舗のデザイン関係の本』とそれぞれ本棚を分けていたため、彼の言葉は、三つめの本棚を指してのものだった。

「フランス料理屋に決まってるやん。でも絶対に店やるし、これも必要やん。」と言うぼくに、彼は「でもこれは、オレらが読む本や(笑)」と言っていた憶えがある。

今回取材をしてくださった柴崎さんが若い方のように映ったぼくは、「まだ、商店建築さんに入社もされていなかった頃の話じゃないですか?」と言ったんだけれど、これだけの思い入れのある専門誌なんだから、ぼくが取材を喜ぶのも至極当然のこと。

「だって、商店建築さんだもの。」

柴崎さん、竹島さん、千葉さん、ありがとうございました。

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。