取材のこと。1.

取材していただいた話が続いたので、取材のことについて書いてみる。

今うちの店は20年目で、今年の10月30日に20周年を迎える。
この間、とてもありがたいことに、ずっーと途切れることなく何かしらの取材をしていただき続けてきた。取材のない年は一度もなかったと思うし、取材のなかった月さえないんじゃないかと思うほど、多くの取材をしていただいてきた。今でも年間で受ける数だと、どれくらいあるのかもわからないほどになる。
その要因として、地理的なことや店舗数が増えたということもあるとは思うけれど、もう20年にもなる最初の店ですら未だに多くの取材依頼をいただく。

ちなみに、ぼくは取材費というものを支払って取材をしていただいたことが、これまでに一度もない。
また、数年に一度くらいは、知り合ったライターさんと会食をする機会もあったりするけれど、お会計の際には100%割り勘で、ライターさんたちに接待をしたこともなければ、もちろん賄賂を渡したことだってない。
稀に依頼である ”商品でないもの(価格が付いていないもの)” をつくった場合には、「価格がないので」と、お代をいただかないこともあるけれど、その場合は大抵、材料費を申し出られるし、基本的には商品であるパンや料理を無償で提供するといったこともない。

で、ここからはパン屋さんに限らず、お店をされている方なら同様の取材依頼メールなどを受けたことのある方が結構いらっしゃるんじゃないかと思う話。

取材依頼の文面の中に「取材費等は、いただきません。」という文言が書かれていることがある。
”依頼” なのに、わざわざ「取材費等は、いただきません。」と断り書きを入れなければいけないというのも妙な話だと思うんだけれど、ここまではよくあるパターン。
ところが続きを読み進めていくと、文章の後半に「商品のご提供を」「パンのご提供を」なんてものがあったりする。どう読んでみても「タダで、ちょうだい。」としか受け取れないんだけれど、率直に ”なぜ?” と思う。

そこで考えてみた。

まず、「宣伝をしてあげているんだから。」といった、ぼくには時代錯誤としか思えない不遜な考えだった場合。
もしそうなら「それほど効果があるとは思えないし、そこまでして取材していただかなくて結構です。」と、思う。

次に、「出版不況で予算がなく、経費をかけれないから。」という場合。
もしそうなら「だけど、その記事であなたたちは利益を得るんでしょ(あるいは、広告費を集める)。そもそもその程度の経費もないなら、そんな雑誌は作らなきゃいいのに。」と、思う。

こういった依頼を平然と送ってこられる人が続いた時に、思い出したことがある。

プロとして、生業としてデザインをされている方に、「ちょっと描いてよ。」「友達価格でやってよ。」といった微妙な依頼をしてくる人がいることに対し、嫌悪するデザイナーさんがいらした。
プロとして当然の反応だとぼくは思ったし、「(パンを)タダで、ちょうだい。」と言われているのと同じような気がした。
悪気はないだろうし、もしかしたらダメもとで言われているのかもしれないけれど(実際に「無償で提供するなら結構です。」と伝えると、「購入させていただきますので…」に変わる人たちもいる。)、つまりこういったことを平然と言ってくる人というのは、パンやデザインを軽視している人たちなんだと思うようになった。

デザインはともかく、パンが軽視される原因があるとすれば、おそらくそれは単価の低さからくるものなんじゃないかと思う。取材だからといって、高級な料理屋さんにも「料理のご提供を」と依頼されているとは、やっぱり想像しがたい。

余談になるけれど、5年前、レフェクトワールで「大人の文化祭」という大きなイベントを開催した際、ポスターを製作しようと思い、せっかくやるならデザインやイラストをプロの方にお願いしたいと考えた。そこでぼくは「彼の描かれるイラストのファンだから」 という理由から、Siphon Graphicaを主宰されている宮下ヨシヲさんに依頼をすることにした。
0A588A96-BD6A-491B-806E-78D38D2BE923

依頼するにあたり、ぼくは最初にメールで「宮下さんには仕事として依頼しますので、ちゃんと請求してください。ぼくはイラストの相場がわからないので、いつも通りのデザイン料で結構です。」といった内容のものをお送りしている。
また、このwebサイトでコラムを連載していただいている外部の方々というのは、ぼくの友人、知人の方ばかりだけれど、仕事として依頼しているので、原稿料をお支払いしている。

取材依頼のメールなどに「商品のご提供を」「パンのご提供を」と書くくらいなら、最初に「取材のお願い」や「取材依頼」でなく、「商品提供のお願い」とでも書けばいいのに、と思う。

それなら、お断りするだけの話なんだけれど。

つづく

59F8F11B-0201-4C9B-B15C-F2DB7203479A

«                    »

西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。