取材のこと。3.

少し前に書いた『パンの名前の話。』の中で、「もうお客様が同業者でもない限り、説明をする際には厨房用語や専門用語といったものは、一切使わないくらいの気持ちでいた方がいいと思うなぁ」と書いたんだけれど、これは場合によっては取材の時も同じだとぼくは思っていて、それについては昔からずっと心掛けていることがあるので、その話を。

取材といっても雑誌、書籍、ムック本、テレビ、新聞、ラジオ、今ならウェブサイトもあったりと様々だし、雑誌と一括りにしてもその中には専門誌もあればファッション誌や情報誌もある。
これだけ多種多様になると、取材をしてくださる側の質問も素朴なものから専門的なもの、あるいは店を始めるまでの経緯だったり今後について、といったものまでと多岐に渡ることになるんだけれど、それでも取材のテーマが決まってでもいない限り、どの媒体の方からも必ずというほど最初に訊かれる質問がある。

「おすすめは、何ですか?」

これは取材の方だけでなくお客様からもよく訊ねられるし、東西を問わず、またパン屋さん以外のお店でも頻繁に耳にする言葉なので、お店という場所においてこれほど汎用性の高い質問も他にないんじゃないかと思う。
で、この質問に対するぼくの答えはいつも決まっていて、「特にありません。」なんだけれど、こう答えると結構な確率で「じゃあ、全部おすすめなんですね。」と言われる方がいらっしゃる。でも、それともちょっと違ってて。もちろん冗談で言っているわけでもなければ、ぶっきら棒に「特にありません。」と、ひと言だけで終わるような会話をしているというわけでもない。

「特にありません。」というのは、もう少しちゃんと書けば、クロワッサンもバゲットも食パンにしてもそれぞれの良さがあるので単純に比較はできないということもあるし、お客様の好みや取材される方の意図がわからないまま漠然と「おすすめは、何ですか?」と訊ねられると、「特にありません。だから本当に好きなものを選んでください。」といった返答になってしまう。
うちはもともとこういった感じなので、取材の撮影でも「ぜひ、これを撮ってください。」といったこともまずなくて、「お好きなもの撮ってください。」ということが多い。

今では取材も、ぼくである必要のないものはスタッフが受けてくれているので、そこでどういったやり取りがされているのかも知らなかったりするんだけれど、ぼく自身がすべて対応していた頃というのは、こんな感じだった。

例えば、春と秋になると決まってパン特集を組まれる雑誌が多いんだけれど、特にそれが女性誌だった場合には依頼があった時点で「デニッシュとか、できるだけ色のあったものの方がいいですか?」と、ぼくの方から訊ねていた。
もちろん特集が明確な場合には当然そんなことは言わないけれど、それが専門誌なのか、情報誌なのか、あるいはファッション誌なのか、また依頼されている方がどういったものを撮影されたいと思われているのか、何を求められているのか、といったことはかなり意識していた。

つづく

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取材のこと。1. 2.

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。