LA JETÉE と 12モンキーズ

少し前、ブーランジェリー・ジャンゴの川本さんと久しぶりにお会いした。
彼は、ぼくなんて比べものにならないくらいのフランス映画、ヌーヴェルバーグの超オタクなんだけれど、そんな彼から「LA JETÉE(ラ・ジュテ)」という古いフランス映画のポスターをプレゼントしていただいた。
ぼくはこの作品自体を知らなかったけれど、さすがフランス映画、さすがヌーヴェルバーグだけに、とにかくポスターがかっこいい。これは観とかなきゃということで早速、amazonで買ってみた。

1962年のSF作品であること、本編が28分という短編映画であること以外には事前に何の知識も持たずに観ることにした。

 

衝撃的だった。

物語の内容はいろんな方が書かれているので割愛するけれど、この映画は全編ほぼモノクロ写真で構成されていて、セリフも一切なければわずかな効果音とナレーションだけで物語が進んでいく。
”ほぼモノクロ写真で” というのは後半の数秒間のみが動画になっているからで、当然これも監督であるクリス・マルケルさんの計算され尽くした演出なんだと思うけれど、ワンシーンだけというのが余計に強烈な印象として残る。

このつくり方、演出方法だけでもかなりの衝撃を受けたんだけれど、時代背景を考えればおそらく予算もなかっただろうし、今のようなCGやVFXといった技術のない時代にSFを撮ろうという発想もすごい。もちろんぼくらが今のSF映画からイメージするような装置などは一切登場しないんだけれど、それでいてSFとして成立していること、そして何よりもテーマがこれほど壮大なものにもかかわらず、たった28分間という短い時間で物語が完結しているということにも驚かされる(ラストシーンなんて切なくさえある)。

ぼくはヌーヴェルバーグの作品は好きだけれど、「理解できているのか」と訊ねられれば、J.L.ゴダールの作品なんかは特にそうなんだけれど、正直「よくわからない」「意味不明」「ストーリーが支離滅裂」「起承転結があるとは思えない」といった感想になる。
これはおそらく普段メジャーな日本映画やハリウッド映画を観ている人が、たまにフランス映画(特にヌーヴェルバーグの作品)を観られた際に多くの方が感じられていることと同じなんじゃないかと思う。じゃあそれでも好きなのはどうしてかといえば、ここからは完全に主観になるけれど、ぼくの場合、特にヌーヴェルバーグの作品を観る際には視点や見方が他の映画を観る時とはまったく違う気がしていて、極端にいえば「ヌーヴェルバーグの作品は、最初からストーリーなんてないよ」くらいの気持ちで観ていたりする。

この「LA JETÉE」という作品はヌーヴェルバーグ真っ只中の時代のものだし、本編が28分というのも観る前から ”いかにもな” 印象を受ける。
ところが観終わると、ぼくは何とも言い難い感動でいっぱいだった。
演出方法こそ他のヌーヴェルバーグ作品と比べてもかなり斬新だと思ったけれど、きっと物語としてちゃんと起承転結があったからなんだと思う。

それにしてもこの作品の素晴らしさを上手く言葉で言い表せないのがもどかしくて仕方がないんだけれど、もしもぼくが中学生や高校生の頃にこの作品と出逢っていたら、おそらく今とはまったく違う進路を目指していたに違いないとさえ思う。
それほど衝撃的だったし感動的だった。
ぼく自身はアートといったものに疎いし審美眼もなければ知識もないけれど、それでも機会があれば、写真や映像をされている方には是非観て欲しいなぁと思う映画だった。

ちなみに、ブラピの怪演が素晴らしい1995年の「12モンキーズ(Twelve Monkeys)」はLA JETÉEを原案にされたものだそうで、冒頭に「INSPIRED BY THE FILM ‘LA JETÉE’ WRITTEN BY CHRIS MARKER」のクレジット表記が出てくる。
こちらもかなりおもしろいし、もう23年も前の映画なのに今観てもまったく古く感じない。
まだ観られていない方は、「LA JETÉE」、「12モンキーズ」と続けて観て欲しいと思う。

川本さん、本当にいい映画を教えてくれてありがとうございました。また、食事にでも行きましょう。

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。