凡人も悪くないと思う話。2.

毎日新聞の三輪さんに京都へお越しいただき、取材をしていただいた。
といってもパンや店舗の撮影があるわけでもなく、ずっと雑談をしているような感じだったので、どちらかといえばインタビューに近かった。
ぼくは訊かれることに対しいつも通り思っていることをそのまま話すだけなんだけれど、話が終わるたびに、

「書けないでしょ?」

「書けないですね・・・」

といったやり取りが何度か繰り返された。
とはいえ、記録のために走り書きをされたノートは3ページくらいにはなっていたと思う。
取材を終えると美輪さんはそれを見つめながら「これをどう文章にしましょ・・・」と困惑した表情でひと言漏らされた。

「だからぼくはライターさん泣かせなんですよ。思っていることを正直に話すから書けなくなる(笑)」

それでも「頑張って何とか書いてみます!」と言い残し、美輪さんは帰路につかれた。

校正の際にご本人にもお伝えしたし、読まれた方はおわかりになると思うけれど、完成した記事は本当に差し障りのない無難な、ほぼ店紹介といった印象のものになった。
きっと、ぼくが逆の立場だったとしてもそうとしか書きようがなかっただろうし、まして媒体が大手新聞社の朝刊となればそうなるのも当然だと思う。
それでも当事者としては、「うちのパンは、凡人が一生懸命作った結果」というぼくの言葉を拾って活字にしてもらえたことがとても嬉しかった。その後の「・・・と謙遜するが、」というのは、本当に謙遜じゃないから要らないんだけれど。

このコラムでお世話になっている長濱さんも ”自分のアイルランド音楽感と共通する部分もある” として、 ”「凡人が一生懸命作った結果」「安い単価で非日常が味わえるのがパンの魅力」西山さんの哲学を感じる言葉。” と、この記事をFBで紹介してくださった。
長濱さんのような人にそんな風に書いてもらうと恐縮するやら気恥ずかしいやらだし、ぼくのそれは哲学といった高尚なものでも何でもないんだけれど、ただ、いつの頃からかぼくは、”凡人も悪くないなぁ、いや、もしかして凡人の方が良いくらいなんじゃないか” と思うようになった。

つづく

 

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凡人も悪くないと思う話。1.

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。