凡人も悪くないと思う話。4.

”自分には何か特別な才能があるんじゃないか” とか、”何者でもない自分が何者かになれるんじゃないか” と本気で思ってしまう、あの根拠のない自信や自分への期待がどこからきているんだろうと考えると、やっぱり若さ故としか説明できない気がする。

人によっては学生や若いうちから頭角を現す少数派の人たちもいるだろうけれどほとんどの人はそうじゃないし、ぼくなんかは仕事を始めてから自分の下手さ、不器用さを自覚したにもかかわらず、それでも漠然と ”何者かになれる” と本気で思っていたほどだった。
今のぼくからすれば、「自分を客観視できていないにもほどがあるよ」って話なんだけれど、それでもそう思えてしまうのは、きっと若い時には時間や可能性がまだまだあると無意識に感じていたからなんだと思う。

子供の頃から才能を評価され、神童と呼ばれたような人が20歳を過ぎればただの人になるというのはよくある話で、大人になる、歳を重ねるというのは、現実を突きつけられることであり、諦めを覚えていくという残酷な面があるんだけれど、それでも決して悪いことばかりでもない気がする。

ぼくは比較的若いうちにそういった自分の才能のなさ、凡庸さといった現実を受け入れることができたんだけれど、それにはきっかけがあった。やはり若い頃に現実を突きつけられ、諦めを覚えるといった精神的な経験があったからなんだけれど、だからこそ今の自分があると思っているし、これがもしも若い頃にそうありたいと自分が望んだような特別な才能や唯一無二の存在といった人になっていたなら、こんなに店を増やせることもまずなかったと思う。
それに今よりも生きづらかったんじゃないかなぁとも思うし、そういった経験もなく今の年齢まできていたなら、きっと他者に不寛容なままの大人になっていたに違いない。

だから必要悪じゃないけれど、致命傷にならない程度の挫折感を経験するのは無駄じゃないし、それによって自分が普通の人、凡人であるということを受け入れられるようになるのであれば、それはとても良いことなんじゃないかとさえぼくは思っている。

つづく

 

D8E6155D-2136-44FF-8A29-7A95DEF4D915

凡人も悪くないと思う話。1. 2. 3.

«                    »

西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。