空想サンドウィッチュリーのこと。 前編

ぼくは何年か前から「今はいけるところまで頑張るけれど、いつか自分がリタイヤした際には、一人だけで小さな小さな屋台のようなサンドイッチ屋をやりたい。」という小さな小さな計画を持っている。
ぼくがそう考えるようになったきっかけは、清水美穂子さんから教えていただいた1冊の本。
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吉田篤弘さんの『それからは スープのことばかり考えて暮らした』

ぼくが吉田篤弘さんによる活字で描かれた小さな小さなお店を想像していたちょうどこのころ、そのお店は “映像として” ぼくの目の前に現れた。

「あ・・・これ、これ!!!」

 







小林聡美さんが出演されていたPascoさんのCMに登場するお店。

ぼくには “さすらう” 気はないけれど。
それでも、東京へ出店をし「さぁ、これから店(会社)を大きくしていこう!」というときに、ぼくの頭の片隅では『それからは 小さなサンドイッチ屋のことばかりではないけれど結構考えて暮らした』ことになる。
別に矛盾だとも思わないし、ぼくはあれもこれもやりたい性分なので仕方がない。
それに、同じ 『一人だけでやるような小さな店を始める』ということであっても、”初めからそうである” のと “店や会社を大きくしたのちにそうする” のとでは、いろんな意味で違うとぼくは考えている。
と、取材などでパンラボの池田さんに会う度に、ぼくはそんな話をしていた。

イベント「空想ブーランジュリー」の準備のために池田さんと都内の雑貨屋さんをまわっていた時のこと。
池田さんが唐突に言ってくる。
「西山さん、ぼくと一緒に本をつくりませんか?」

パン職人さんに限らず、ぼくの知っている方々の中にも “自分の本を刊行したい”、”自分のこれまでやってきた仕事を書籍として残したい” と考えられる方々は多い。
ところがぼくには “自分の仕事を書籍という形で残したい” という願望や感覚がまったくない。きっと、ぼく自身が 残すほどのことをやってきていないと考えているためなんだと思う。
それ以前にぼくのレシピ本なんて想像もつかないし、そんなものを読んでもぼく自身がおもしろいとは到底思えないということを池田さんに伝えた(最近も書籍の打診を2つ受けているけれど、池田さんのときと同様にお伝えしている)。
ところが、ここからが池田さんの企画力の凄さ。

『西山さんがずっと言っていた引退後にやろうとしているサンドイッチの屋台を一足先に本の中でやりませんか?ダンボールか何かで屋台をつくって。テーマを決めて毎回その場所に屋台を組んでテーマに合ったサンドイッチを西山さんにつくってもらい、それをレシピにする。本当に屋台はあるし、サンドイッチも食べることができるけれど “架空の屋台” 。』

池田さん、ぼくが「やりましょう」というツボを本当に心得ているなぁ・・・

『どうせやるなら、もしも本当に書籍化されたときに “専門書のコーナーに並ばないような本” にしましょう。それなら、ぼくたちらしくておもしろそうです。』とぼくは答えた。

こうして「空想ブーランジュリー」のスピンオフにあたる企画『空想サンドウィッチュリー』が始まるのでした。

つづく

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西山 逸成

代表取締役製造補助

Le PetitmecとRéfectoireの隊長をやっています。